「左官」と呼ばれるのはなぜ?歴史と名前の由来を解説

伝統的な壁仕上げ方法である左官は、その独特の仕上がりや優れた機能性から、近年再評価されています。

しかし、施工の機会が減少しているため、「左官」という仕事がどのようなものか知らない方も多いのではないでしょうか。

 

◇左官の始まり

左官の起源は縄文時代に遡り、竪穴式住居の土壁がその始まりとされています。

現代の伝統左官で使用される土壁や漆喰は、飛鳥時代から使われ始めました。

奈良時代には、仏教や技術と共に唐から伝わった左官鏝を使って、寺院の壁が作られ、長い年月をかけて日本独自の鏝が発展し、現在では世界でも群を抜く種類が存在しています。

さらに、安土・桃山時代には茶道の茶室建築で左官が活躍し、江戸時代には漆喰仕上げが開発され火事抑制に貢献します。

そして、デザイン性も向上し、商人の土蔵や町家の装飾を手掛け、文明開化後には洋風建築物の装飾にも携わりました。

 

◇どうして、「左官」と呼ばれるのか?

これにはいくつか興味深い説があります。

平安時代、法令制度に基づく四等官制度があり、宮廷に出入りするには官位が必要でした。

壁塗り職人は修繕工事に従事する際、四等官の一つである「属(そうかん)」の官位を与えられ、この「属」が訛って現在の『左官』になったと考えられています。

また、別の説では、大工が「右官」と呼ばれていたことから、左官という名称が生まれたとも言われています。