日本は国土の約73%が山地であるため、世界有数の「トンネル大国」と言われています。
道路用トンネルだけで約1万本が記録されており、同様の地形を持つイタリアやノルウェーにも匹敵する規模です。
トンネルは、人や車、鉄道だけでなく、水道水や電力を最短距離で運ぶ重要なインフラ構造物として機能しています。
◇日本のトンネル技術が世界トップレベルである理由
日本がこの分野で世界をリードする理由は、複雑な地質や地盤に対応するため、技術者たちが長年にわたって研鑽を積み重ねてきた結果にあります。
特にシールド工法は、地上空間を保全したまま工事を進められるため、地下鉄、下水道、ガス管、貯水施設といった都市の地下インフラの建設に適しており、日本で技術が高度化した背景の一つとなっています。
また、細部にまで注意を払う日本人の繊細な気質が、これらの技術の発展に大きく寄与したことも見逃せません。
◇経験が技術力を向上させる
土木工事には、理論以上に実際の体験や知識の蓄積を重視する「経験工学」という考え方があります。
この考え方は特にトンネル工事で重要であり、どの工事でどのような問題が生じ、その解決にどの技術を用いるべきかといった経験値が積み重ねられてきました。
本州と北海道を結ぶ「青函トンネル」は、その建設に約20年を費やし、世界トップクラスの技術が結集した象徴的な事例です。
また、異なる断面や規模のトンネルを接続する技術や、大断面化の技術は日本が先駆けて開発しました。
さらに、限られた空間で新幹線の複線トンネルを構築するなど、世界に誇るべき日本の高度な技術が数多く導入されています。